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転校すると、以前の通信簿の成績に戻るまでに1年くらいかかるらしい。
これは僕の母親が、転校前の学校の父兄から仕入れた情報であり、転校後の学校で裏をとる事ができた話でもある。
転校生の登場によって、今まで通信簿の評価が5だった子が4になるのは可哀想だから、転校生の能力をじっくり見極めてからという事だろうか。通信簿をつける際に微妙な判断を要する時は、情が移っている教え子に甘めの採点をしてしまう部分もあるのだろう。
母親は、
「だから、6年生の3学期に転校できるのはラッキーなんだよ。中学生になる前に、地元に慣れる事も出来るし。」
と、プラス思考な話をした。
確かにその通りだった。
クラスの皆は、前にいた学校とは勉強に取り組む姿勢が全然違う。
超難関有名私立中学を受験するクラスメートも何人かいた。
以前の学校では、明日は試験だと言われても、試験対策をすることはなかった。社会科の教科書に書いてある事を、隅々まで暗記する事もなかった。それでも、通信簿で5は普通にとる事ができた。しかし、ここでは、宿題以外の勉強もしないとやっていけない。塾に通っている子達に、何もせずに勝てるわけがない。と気付いたのは、試験が終わってからだった。
図工の方は、先生が産休とやらで、代理の先生にしかお目にかかれなかった。評価材料となる、皆と共通の作品を提出する機会もなかった。したがって、通信簿の評価は3になると言う。まあ、これは仕方がない。
体育の方では、マラソン大会があった。
しかし、僕はもうすでに前の学校で走って1位になっていたのだ。いくら、マラソンが得意だとは言っても、マラソンがそんなに楽しいものだとは思っていない。2度も走らされて理不尽だという思いが先行した。
だから、モチベーションがあがらず、適当に力を抜いて走った。結果は10位前後だった。
ある日、クラスの担任の先生に呼ばれた。
「以前の学校の担任の先生から、君は頭脳明晰でスポーツ万能な、天才芸術家だと聞かされているけど、ちょっとまだ、本領を発揮していないようだね。何か悩みでもあるのかな。」
と、言われた。
「悩みはない。」
と答えた。
しかし何か、以前の学校を侮辱されたような気分になった。そして、前の学校の友達に対しても、ちょっと申し訳ない気分になった。友達の事を思い出したら、涙が出てきそうになった。涙を堪えるので精一杯だった。