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中学生になるに際して、不安な事があった。
それは、全員丸刈りを強制される事だ。
戦時中の話ではない。半ズボンの制服の次は、丸刈りというわけだ。転勤で、色々と余計な試練を与えてくれる土地柄に移り住んだものだ。
何故そんな理不尽な事を強制されなければならなかったのか、未だにその理由はよく解らないが、おそらく、非行防止だの、学業に専念するためだのという、くだらない理由だったのだろう。
今でこそ丸刈りは、小野伸二やジダン(?)等のお洒落なスポーツ選手のおかげで市民権を得た。しかし、当時丸刈りは、カッコいい世界とは無縁のものだった。僕からしてみても、丸坊主といえば、お坊さんかヤクザか旧日本兵。テレビのニュースでは、丸刈りを拒否する勇気ある生徒の事が紹介されていたりもしていた。
しかし、丸刈り自体が自分には未体験ゾーンだったので、似合うかどうかも全然解らなかった。だから必ずしも、丸刈りに対して強烈に拒否反応を示したわけではない。
実のところ、丸刈りは、はまる人とはまらない人がいる。
一般的に言って、丸顔の人や、四角い顔の人は似合う。なかなか様になって、見られる。
一方、面長の人の場合はケースバイケースと言ったところだろうか。
卒業式を間近に控えたある日、クラスの担任が、
「卒業式で、君達の坊主頭を見たい。」
とのたまった。
まったく余計な事を言ってくれたもんだ。丸刈りの儀式の日が早まってしまった。
しようがないので、卒業式の前日に床屋に行く事にした。丸刈りを注文すると、長さをどうするのか聞かれた。店主に普通はどうなのか聞くと、一番短いやつで良いんだと言った。今思えば、店主がその時、商売的に得な方を選択してくれた方がまだ良かった。
卒業式の日に登校すると、クラスの全員が丸刈りにしていた。無論、女子は丸刈りではない。
クラスの女の子は、僕の坊主頭を見て、面と向かって笑った。関西の女の子は積極的な所は良いが、デリカシーに欠ける一面もある。
人生で初めて、容姿を笑われた。王子様が、王冠を脱いだ瞬間だった。
実際のところ、丸刈りは似合わなかった。
僕は写真嫌いになった。