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ある企業に対し、企画コンペのプレゼンテーションをした事がある。
その企業とは、会社としては過去に一度だけ取引実績があったのだが、私と相手の担当者が顔合わせをするのは初めてだった。
相手とはそういう関係だから、プレゼンの方はやや緊張した面持ちでスタートした。こちらとしては、ひとまずプレゼンテーションを行い、後で質問を受けるスタイルを想定していた。
ところが、ある資料を見せたところ、相手はそれにくいついてきたのだ。もうそこからはプレゼンではなかった。
企画会議だ。
何故プランはそうなっているのか、どうすればそのプランが更に良くなるかを、皆で話し合っていた。有意義な議論を行い、一同大笑いするシーンもあった。そしてその瞬間、会議室の中に、一体感のような物が生まれたように感じた。プレゼンが終わり退席する際も、確かな手ごたえを感じた。
そして後日、「御社にお願いします」との連絡を、無事受ける事ができた(完。
この例は、何故上手くいったのだろう。勿論それは、プレゼンしたプラン自体が良かったからだ。でも、プランに対する反応以上の何かを、その時感じた。プレゼン前、プレゼン後で、お互いの心理状態に何か変化があったように思った。
実は、その秘密を解く鍵が、「ラポール」だ。
ラポール【rapport(仏)】は心理学用語で、円滑なコミュニケーションをはかるための土台となる、健全な人間関係の事を言う。お互いの心がなごやかに通い合った状態の事だ。
「敬意」、「誠意」、「関心」、「信用」、「共有」、「好意」、「賛同」は、ラポールをつくりあげる上での重要なキーワードだ。また人は、相手の「信念」に共感した際に、強固なラポールが生まれるとも言われている。
プレゼンの際に企画内容が良かった事は、ラポールを創り上げるための「きっかけ」にもなったように思う。プランは、相手企業の事を深く調べて、最も喜ばれるものは何かを考え抜いた結果生まれたものだ。「誠意」と「敬意」を具現化したものだとも言えるだろう。そして、相手はそれに敏感に反応し、「関心」を持ち、「賛同」して、プレゼンの間に割って入ってきたのだ。
更に、会話の受け答えをするプロセスの中で、「信用」が高まり、皆が一つのテーマに対して頭をひねり、真剣にディスカッションをし、一緒に笑ったりする中で、「共有」が生まれていったのだと思う。
この例はプレゼンについてだが、面接もそれに近い側面があると思う。面接の際に、「質問をされて機械的に答える」というイメージでは、このラポールは生まれにくいかもしれない。面接官との間にある壁を取り払い、距離を縮めていく積極的な働きかけが必要だ。
ラポールを創り上げて行く場面は、面接だけでなく、履歴書を作成したり送付したり、問い合わせを行う際にもある。ラポールは、良好な社内関係や友人関係を築いていくうえでも、非常に重要なものだ。
また、ラポールの反対の言葉は、アンチラポールとなる。ラポールを創り上げる反対要素で形成された人間関係だ。人は、アンチラポールがある人に対しては、何も頼みたくないし、何も頼まれたくないものだ。
余談だが、男女が一緒にジェットコースターに乗ると、強烈な恐怖体験を「共有」する事で親密になれると言う。これを吊り橋理論と言う。同様にお化け屋敷も効果的だ。このように、ドキドキ作戦がデートに効果的だというのは、心理学的にも裏のとれた話である。
いずれにしても、面接の際には、ラポールをつくりあげるために努力したい。このイメージは、一方通行ではない。丸い温かいものの中に、皆が包み込まれるようなイメージ。そんなセルフイメージが描ければOKだ。