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社会人になって4年目位の時に、ある王手の広告代理店の人と仕事をした。
結構親しくなったので、飲み会の席で昔話とか、苦労話を色々してくれた。
その当時は、その広告代理店には、入社1年目でいきなり転勤というのがあったらしい。その人は、生粋の東京の人なのだが、転勤で大阪に行く事になったわけだ。
すると、そこには、どういう事態が待ち受けているのだろう。
これは、普通の人にはわからないと思う。日本の社会の、隠れたブラックホールと呼んでも良いと思う。
その人は、いかにもというような広告代理店の人だった。独身でもあったので、転勤先の大阪で、足繁くキャバクラに通ったりもしたわけだ。
ところが、キャバクラのお姉さん達が、口を利いてくれないらしい。普通、広告代理店の人は、キャバクラでも、もてるのに。
それは何故だろう。
その人の見た目に問題があるとか、そういう事ではない。むしろ、その人は、明るく爽やかで、かっこ良いタイプだと言えると思う。
理由は、東京弁だからだ。
実にくだらない事だと思う。
でも、それが現実なのだ。
僕は関西人を6年ちょっとやっていたから、そのキャバクラのお姉さん達の気持ちも分かる。
要は、寒いのだ。
東京の言葉を話されると、その場の空気が凍りついてしまうのだ。
実に不思議な事だ。これほど、テレビが普及して、標準語には慣れているはずなのに、馴染めないのだ。いざ、自分の目の前でその言葉を使われると、奇異な感覚を受けるのだ。かっこつけやがってと、拒絶したくなってしまうのだ。
関西の人達は、トレンディドラマの中で交されるような会話が、実際の日常生活で交されているとは信じていない。玉音放送か、おとぎ話のような、遠い世界の言葉だと思っている。舞台俳優が演じる、シェークスピアかなんかの、つくられた世界の言葉なのだと、勝手に自己解釈している。自分達がなまっているなんて事は、120%認めない。自分達が正義だと思っているのだ。
だから、ぱっと見たところ、自分と同じ日本人のように思える人間の口から、架空の世界の言葉が発されると、ビックリし、困惑するのだ。三流役者の棒読みセリフを聞かされているようで、不快なのだ。迷惑なのだ。ロボットか宇宙人に、侵略を受けているような気持ちになってしまうのだ。
関西の人達は、
「はよ、日本語しゃべれや。」
と心の中で、思っているのだ。
中にはそう思う人もいる、という事ではない。
関西人全員がそう思っているのだ。そういう感覚を持ってしまう、と言った方が近いかもしれない。必ずしも悪気があるわけではないのだが。これは、それほどまでに言葉が全く違う事に、根本原因がある。
これは本当の話だ。しかし、その事を口に出すか出さないか、態度に表すかどうかは別問題だ。差別問題とも類似する部分があると思う。
では、東京の人は、こういう相手に対して、どうやって接していけば良いのだろう。
郷に入らば郷に従え。
それも一理あるだろう。そういう姿勢は必要だろう。
しかし、あなたが、仮に東北に行ったとして、東北弁を真似ようとするだろうか?東北弁をマスターしようとして、必死になるだろうか?
そんな事は、しないだろう。現在の自分の言葉で押し切ろうとするに違いない。リスニングの勉強はしても、スピーキングを習得しようとは思わないだろう。何故なら、東北弁はかっこ悪いから、真似たくないからだ。
同様に、関西人は、東京に行っても関西弁で押し通す。
なら良いだろう。大阪に行っても東京弁で。
まあ、この言葉の問題はまた改めてする事にしたいと思う。
それで、結局、その広告代理店の人は、キャバクラのお姉さん達に、まともに口を利いてもらえるようになるまでに、3年位かかったらしい。その3年間に、お姉さん達との距離を縮めるために、どんな努力を行ったかという事については、忘れてしまった。
でも、この話は、大人の世界の事だ。しかも、東京から大阪の話だ。
こういうのは、苦労のうちには入らない。
ただの笑い話だ。